【2024/03/13開催】警察歯科講演会のお知らせ

「下記講演会を開催いたしますので、ご参加くださいますようお願い申し上げます。
参加をご希望される方は、お問い合わせメール宛にお申込みください。」

警察歯科講演会のお知らせ

日時 : 令和6年3月13日(水)午後7時30分
場所 : 葛飾区歯科医師会館 
演題 : 能登半島地震における歯科身元特定作業から-歯科所見とDNA鑑定の使い分け-
講師 : 神奈川歯科大学社会歯科学系 法医学講座 歯科法医学分野  教授・当会顧問 山田良宏 先生

抄録

歯科医師が行う身元不明死体の身元特定作業は、令和2年4月に施行された「死因究明等推進基本法」(安全で安心して暮らせる社会及び生命が尊重され個人の尊厳が保持される社会の実現に寄与することを目的とした法律)において、従来の医師による法医解剖を主とした死因究明と並ぶ役割として重要視しています。

1月1日午後4時10分頃に発生した石川県能登地方を震源とする地震(能登半島地震)は9日夕の時点で、石川県内で死者202人、安否不明者102人と報道されています(中日新聞)。日本歯科医師会では、発災当日午後4時30分に令和6年能登半島地震災害対策本部(本部長:高橋英登会長)を設置し、支援活動を行っています(HP参照)。大学教員と警察歯科医を中心とした日本法歯科医学会では、「日本法歯科医学会災害対応計画」に則って事態を注視し、行政からの出動要請に備え体制を整えています(10日現在)。

死体の身元が顔貌や所持品で特定できない場合、三大手段とされる指紋・歯の所見・DNAを死体の状況で最善の手段を選択することで、迅速かつ正確な身元特定を行います。

身元不明死体の状態が完全な場合、指紋・歯の生前資料が残っている場合は指紋・歯の所見を優先し、DNA鑑定は指紋・歯の生前データが存在しない場合や判断に苦しむ場合に最後の手段として用いるべきで、最初からDNA鑑定を行うのは時間と費用の無駄になります。

本来DNA鑑定は犯罪捜査のために行うもので、犯罪現場の遺留物と被疑者の口腔内細胞からDNAを抽出、核の常染色体DNAをSTRキット(Global Filer 2019年より)で分析、21種類のDNA型が遺留物と口腔内細胞ですべて一致した場合は565京(けい:1016)人に1人という間違いのない確率になります。本学では犯罪捜査にも積極的に協力しており、GFを基本として、性犯罪で男性被疑者の特定に有効な男性のY染色体を分析するYSTRキットを、さらに科捜研が用いていない超微量DNAの分析に有効な核外のミトコンドリアに存在するミトコンドリアDNAの分析を加え、事例により使い分けることで科捜研以外国内最多の鑑定を行っています。今回、能登半島地震における歯科身元特定事例などを踏まえ、歯による身元特定の重要性について再度確認しDNA鑑定に頼ることのない身元特定について説明します。

山田良広(やまだ・よしひろ) 先生

<略歴>
1987年 神奈川歯科大学 卒業
1995年 東京大学大学院医学系博士課程修了 博士(医学)学位受領
同年 神奈川歯科大学講師(法医学)
2005年 同上 教授 大学院教授(法医歯科学)
2021年 同上 教授 大学院教授(社会歯科学系 法医学講座 歯科法医学分野)

<研究テーマ>
歯科法医学全般、DNAによる身元特定と犯罪捜査、児童虐待の早期発見

<社会的活動>

  • 証人出廷36件(直近、横浜地方裁判所 令和5年3月23日)
  • 令和5年度嘱託(継続)
    •  厚生労働省社会・援護局 戦没者遺骨収集事業構成員
    •  神奈川県死因究明等推進協議会委員、東京都歯科医師会学識経験者、
    •  神奈川県歯科医師会警察歯科医師会参与
  • 令和5年度非常勤講師
    •  医学部5校(東京大学・千葉大学・広島大学・名古屋市立大学・帝京大学)
    •  歯学部2校(松本歯科大学・九州歯科大学)
  • 鑑定嘱託(警察・裁判所・検察・外務省・厚労省等から)
  • DNA鑑定(1251件)、身元特定・年齢推定(約200件)

<学会活動>
日本法歯科医学会 理事長、日本犯罪学会 理事、歯科基礎医学会 評議員

<主な著書>
「歯の鑑定入門」 医歯薬出版(共著)
「法医歯科学[第6版]」 医歯薬出版(共著)
「NEWエッセンシャル法医学[第6版]」 医歯薬出版(共著)
「法歯科医学[第2版]」 永末書店(編集・共著)
「アトラス臨床法医学」中外医学社(共著)

令和6年1月1日現在